ソフトウエアエンジニアは21世紀のプロレタリアートになるな
現在、製造業のエンジニアがプロレタリアート化しつつある気がしてならない。
負荷の高い仕事と深夜までの残業で疲弊しているのである。
エンジニアの多くは、会社に勤めるサラリーマンとして活躍している。会社の給与以外の収入源を持っていないから、過酷な条件の仕事もこなさなければならない。
エンジニアは企業の正社員ばかりでない。派遣の方や契約社員の方も多い。
21世紀のような資本主義ビジネスにおいて、正規雇用を希望しているが派遣社員や契約社員で働く方をプロレタリアートになぞってプレカリアートと呼ぶ言葉も存在している。
製造業はオートメーション化が進んでも多くの人間による労働は必ず存在する。時代が機械からエレクトロニクス/ソフトウエアになろうとも同様である。
20世紀の製造業の時代では、ネジ、ボルト、板金加工などの下請け業者が多数存在した。20世紀の日本の繁栄は、製造業を抜きには語れない。大手メーカーの開発力もさることながら、大田区などに代表される小さな町工場が高い技術を保持し、日本の製造業を支えてきたことは誰もが知っている。
これら下請け企業がなければ大手のメーカーも立ち行かかったであろう。
一方、過去から現在まで製造業の下請け企業は経営上は苦労の連続であった。製造業の最上位に位置する大手メーカーが、生産性を向上させるてっとり早い方法は下請け企業に安い値段で発注することである。
よく製造メーカーがマスコミに「さらなる生産性向上を目指す」と言う場合の多くは、蓋を開けると外注化するコストを安く発注しているに過ぎないこともしばしばであった。もちろん自社の体質改善に積極的な企業もある。
多くの企業は直ぐに効果が期待できる外注化するコストを安くすることに熱心になりやすい。中国やインドをはじめとする海外へのオフショアがいい例である。
もちろん、外注化するコストを安く発注することい自体は間違いではないし悪いことでもない。しかし、問題も多い。
21世紀は情報化時代である。下請けの様相も変わりつつある。現代の製品である携帯電話、デジタルTV、自動車、パソコンなどエレクトロニクス、ソフトウエアが製造業の性能の中心を決定づける競争の源泉になりつつあり、開発コストでも多くの部分を占めるようになった。
大手製造メーカーは自社でソフトウエア開発をしない傾向にある。外注化によるコスト削減と開発スピードへの対応のためだ。
しかし、時代が21世紀になり、ハードウエアからソフトウエア時代になろうとも発注側と受注側の仕組みは変化しない。
21世紀は情報化時代では、OS開発、ドライバー開発、ミドルウエア開発、アプリケーションなどのソフトウエア開発などが、大ざっぱだが21世紀の下請け企業が行う作業に該当する形だ。下請け企業の様変わりしつつある。
今回の大不況で仕事を失ったり、大きく減らされることから分かる通り、どんなに高い技術を持っていても下請けであるかぎり発注側があくまでビジネス制御する側にあり、下請けは厳しい条件をのまざる負えないことが続く。
21世紀の情報化時代であると共に「知的産業競争の時代」であるから、仕事を受注する場合でも、あくまで「作業工程の上位」に絡まない限り経営上の安定は難しい。下流工程の作業になるにつれて劇的に条件が悪くなる。これは、ビジネス上の競争相手も多くなり、低価格競争になりやすいからだ。
このような状況の中でソフトウエアエンジニアの業務が過激な価格競争と短期開発を課せられ過酷労働になり体も精神も疲弊している現在、ソフトウエアエンジニアが21世紀のプロレタリアート化しつつある気がしてならないのである。
また、製造業にまで、派遣社員、契約社員という形態を許した時点で、エンジニアのプロレタリアート化が加速しているようだ。
学生が理科系離れしているのも、このような状況に不安を感じてではないか。あるいは、現代の錬金術であるレバレッジを活用した金融ビジネスの方が「簡単に金になる」という考えだろうか。
もしそうなら、エンジニアの仕事が若い人に夢を与えられないエンジニア自身にも問題があるだろう。
エンジニアの語源は「天才(GENIUS)」と聞いたことがある。無から有を創造するのがエンジニアの真骨頂なのだから、エンジニアが契約打ち切りで仕事がないという話はあまりにも切ない。
エンジニアの真骨頂を発揮するにはやはり起業だろう。海外のベンチャーに見るように自分の専門技術で勝負するような意識とバイタリティーの意識改革が必要である。
=HSCI Takanari Hashimoto(URL:http://hsc-i.com/)=
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