書籍「Object-Oriented Software Engineering」
今回の独断と偏見の往年の名著紹介シリーズで取り上げるのは書籍「Object-Oriented Software Engineering」である。1992年の出版である。
この書籍は、私があるプロジェクトで新しい大規模リアルタイムシステムの開発に着手したばかりのことだと記憶している。それだけに、何度も繰り返し参照した。
この書籍以前に出版されたオブジェクト指向の書籍は、クラス図が解説の大部分に当てられている書記がほとんどであった。
それに比べ「Object-Oriented Software Engineering」で取り上げられる開発方法論「Objectry」は、以外にクラス図の解説が少ないように感じた。だが、実際には大変重要な分析・設計の解説が多く述べられている。
書籍の前半に登場するユースケースの解説が特徴的でユニークな書籍であることはすぐに感じたのだが、当時はクラス図やサブシステム分割および状態図のテクニカルな解説に興味を持っていたので、じっくり読んだのは少し時間が経過してからである。
この方法論「Objectry」が優れているのは、現在のRUP(IBM Rational Unified Process)のベースになっているユースケースドリブン開発である。
たとえば、それまでの開発方法論はクラスの抽出に対して簡単なガイドと代表例を挙げているだけで、どこか経験則的な方法になってていたが、ユースケースドリブン開発はクラスやオブジェクトの抽出をプロセス化していることに成功している。
(ただし、実際には他の手法や方法論で述べているアプローチも知っていた方が優れたクラス構成を得ることができる)
書籍の前半には継承についてかなり詳しい解説があり、著者のIvarはオブジェクト指向の研究者でも継承とポリモフィズムについて勘違いしている物もいると述べているとおり、継承について理解をするに役に立つ。
また、アーキテクチャ部分では現在のUMLのコンポーネントに該当する「ブロック」を用いてクラスの割り当てと型やメソッドのエクスポートコンロトールについて解説している。
「Objectry」は並行性設計とオブジェクト指向設計との対応についても解説されている章があり、私のような組み込み・リアルタイムシステムの開発やコンサルテーションに従事している者にとっては、本質を突いた解説は得るものが多い。
他にもこの書籍はテストや開発プロセスについてより現実的な話題を扱っているおり、方法論として、他の方法論より手順化したアプローチが体系的・具体的にされている。書籍の後半ではSEI-CMM(このときはSW-CMM)について解説が既にこのときに紹介されている。
=HSCI Takanari Hashimoto(URL:http://hsc-i.com/)=
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