書籍「OMT」
往年の名著を独断と偏見で紹介するシリーズの今回はOMT(Object Modeling Technique)である。
この書籍が出版されるまで、前回のピーターコード氏の書籍「Object Oriented Programming」で紹介したように、分析、設計、プログラミングが一貫して紹介されているものがなかった。
唯一、ピーターコード氏が3冊の書籍に分けて自身の開発方法論を分析、設計、プログラミングを解説していた。
そこにGEの研究所のランボー氏達により、1冊の書籍でオブジェクト指向分析、設計、プログラミングが詳解される書籍が登場した。1991年のことである。
のちに凸版出版社から日本語で翻訳書が出ている。
この書籍の特徴やすぐれている点は沢山ある。
まず、ノーテーションが優れていたことである。それまでクラス図が中心であったオブジェクト指向分析、設計に、シーケンス図、状態図などが効果的に方法論として組み込まれていた上に、明確かつ詳細な情報を追加するために、制約や限定子などが登場する。
OMTは明確にクラス図とオブジェクト図を意識して明確に使い分けている点も異なっていた。継承や集約/コンポジションの解説も明確であり図に表現方法も新鮮だった。
ピーターコード氏の方法論でもシーケンス図、状態図は登場するがOMTに比べると表現力が不足しているし、作業手順としての明確さが弱い。また、集約とコンポジションの区別はあいまいであった。
今後紹介するシュレイヤーメラー法(現在ではExecutableUMLとして発展)でもクラス図(SM法の用語で情報モデル)以外に状態図(ムーア型の状態図)やシーケンス図に近い(オブジェクトコミュニケーション図)が登場するが、OMTに比べ作業手順やモデルでの表表現力は弱い気がした。
また、SM法には集約/コンポジションの表記法がなかった。
#ただし、SM法は開発手順に変換型を主張しているアプローチのため、単純な方法論間の比較をすることが難しい。この辺は後日紹介したい。
OMTの書籍の優れた点は上記したように分析、設計、プログラミングがシームレスなモデルと作業手順で一貫して紹介されていた点である。
特に、設計モデルのプログラミング言語のマッピングもガイドラインではあるが、C、Ada、Fortran、C++、Smalltalk、Eiffelへの実装方法が紹介されており、設計モデルをそれぞれの言語へ如何に当てはめるのかを、クラスの定義、関連の実装、状態の実装、継承の実装方法として、それぞれ詳しく解説されており当時かなり参考になった。
OMTの書籍には各章末にに練習問題があるが、この問題の解答例集が「Solution Manual」として別売されていた。Solution Manualには本編には無いちょっとしたテクニックも紹介されていたのを覚えている。
写真では青い書籍が「Solution Manual」であるが、こちらは翻訳されていない。
=HSCI Takanari Hashimoto(URL:http://hsc-i.com/)=
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